



「家系図を作る」と聞くと、多くの人は“親子関係をまとめた図”を思い浮かべるはずです。確かに家系図は、戸籍をもとに父母・祖父母といった家族のつながりを整理する大切な資料です。でも、いま注目されている「家史調査」は、それより一歩も二歩も深く踏み込むもの。言ってしまえば、家系図が“地図”だとしたら、家史調査はその地図に“物語”と“背景”を書き込んでいく作業です。
家史調査の中心になるのは、戸籍に書かれた事実を手がかりに、全国に散らばる資料や文献、地籍図、郷土資料、古い地図、寺社の過去帳などを調査し、「その家がどこから来て、どう生きてきたのか」を立体的に描き出すことです。
そこには、“何年に生まれた”“どこで結婚した”といった表面的な情報だけでなく、先祖が暮らした土地、移住の背景、その時代に起きていた社会の出来事、家がどんな役割を果たしていたのか――そうした生活の断片や背景が含まれます。
北海道では、多くの家庭が明治期に本州から移住しています。しかし「うちはいつ来たの?」「どういう理由で北海道に?」と家族に尋ねても、誰も知らないことが珍しくありません。家史調査では、こうした“語られなかった歴史”を掘り起こし、開拓の背景や移住の事情を記録として残すことができます。
これは家系図だけでは絶対に到達できない領域です。
家史調査を行うことで得られる最大のメリットは、自分のルーツへの理解が深まり、家族への尊敬や愛着が増すことです。
自分がどんな人たちの努力の先に生まれ、どんな土地とつながってきたのかを知ると、家族の存在の重みが変わります。
また、家史をきっかけに家族の会話が増え、親世代や祖父母世代が嬉しそうに昔話を語ってくれることもよくあります。家史調査は、家族のコミュニケーションを自然に深めるきっかけにもなるのです。
意外かもしれませんが、家史調査は相続の準備にも役立ちます。家族間で“歴史を共有している状態”は、財産の話をするときのギクシャクを和らげ、すれ違いや感情の行き違いを減らす効果があります。
事実として、家史調査の過程を経て、家族の雰囲気が良くなったという声は多くあります。
家系図は「血縁の構造」を、家史調査はその構造に「息づく物語」を与えてくれます。「どんな人たちが、どんな時代を生き、どんな思いで今につながっているのか」。その答えを知りたいなら、家史調査はとても価値のある選択肢です。