



相続トラブルの相談を受けていると、表面上は財産の分け方が争点に見えても、根本にあるのはまったく別のテーマであることが多くあります。その最たるものが 「家族間のコミュニケーション不足」 です。
普段あまり話をしないまま、家族の歴史や親族関係、過去の出来事について共有されないまま相続を迎える——。この “情報の空白” が、誤解や不信感として膨らみ、争続へとつながっていきます。
この問題を事前に解消するために有効なのが、家史調査(かしちょうさ) です。家族の歴史を調査するそのプロセスそのものが、家族の対話を生み、相続リスクを大きく減らす効果があります。
相続で揉める家庭の多くで見られるのは、次のような状況です。
このように、家族の歴史を語る場がないこと が対立の根本原因になるケースは非常に多いものです。逆に言えば、家族の話題として家史を共有するだけで、相続に伴う不信感や誤解は驚くほど減っていきます。
家史調査とは、家族の歴史を以下のような形で “見える化” する作業です。
相続の話は感情的になりやすいですが、家史の話は “家族の物語” なので比較的穏やかに会話が進みやすいという利点があります。
家史調査を進めていると、家族が知らなかった事実が出てくることがあります。
こうした情報が明らかになると、
「そういえばおばあちゃん、同じこと言っていたね」
「この話、家族でちゃんと話したことがなかった」
と、家族内で新たな対話が生まれます。これこそが争続を防ぐ最も大きな効果です。
特に “移住型の家族史” は情報が断片化されやすく、話題にするタイミングが極端に少ないのが特徴です。だからこそ、家族で対話するきっかけを今つくっておくこと が重要です。
相続の問題は、財産よりも、家族がこれまで「話してこなかったこと」 に根があります。家史調査には、家族が自然と会話し、互いの理解が深まる仕組みがあります。
争続を防ぐためにも、そして家族の物語を未来につなぐためにも、家史調査を取り入れてみることをおすすめします。